準天頂衛星みちびきは、2010に打ち上げられ2018年11月から4機体制で運用中で、2023年度あたりには7機体制を目指すとしている。
7機体制になると、
①GPSに頼らず持続測位可能…日本付近に常時5~7機の準天頂衛星が位置することで可能に
②即位精度向上…日本国内はセンチメーター級、アジア・オセアニアも今後精度向上へ
③航法信号の電子署名…GPS、Galileo測位信号妨害(ジャミング、スプーフィング)対策
大まかにはこんなメリットがある。
中でも、①と②は直接的に恩恵を感じるところ。①に関しては、中国のバイドゥ衛星と同じように、自国単独測位システムの確立
②は、これから先の日本には必要な技術。国内社会のハイテク化加速に応えるだろうね。
と、明るい話だけばかりじゃなく…
現行GPS受信機にとっては、みちびき利用にちょっと不安なことがある。今すぐどうって話ではないけどね、①の関係もある話かと。
みちびき7機体制が始まると、GARMINやスマホが衛星から受信する民間用測位信号(補完信号)L1C/Aが、随時、L1C/Bに切り替わる計画。
これ、L1C/Aは干渉が大きく解消したいけれど、GPS衛星利用で2015年にアメリカが合意した信号よりも、高スペックでは送信不可という制約の解消が目的。
他国に影響されず高度な測位が図れるなら、欠点つぶしは当然。だけど、現行GNSS(GPS)受信機は、アメリカGPSやロシアGLONASS信号を掴んでる。
特に、GPSはL1C/Aを送信する。受信機がみちびきのL1C/Bを混信した場合、信号強度が下がり測位値に大幅な誤差を招く恐れが。(150m程度の誤差とか)
これではお話にならないので、みちびき側ではL1C/AとL1C/Bの“PRNコード”分離を考えているようだ。
PRNコードとは、“衛星ごとの測位信号コード(番号)”。それが違えば、L1C/Aの受信機はL1C/Bを受信できず、混同による誤差は解消される。
“現行GPSは、現状のままでは将来にみちびき測位信号を利用できなくなる”
この解消には、GNSS(GPS)受信機側で
①L1C/B信号に対応のデータフォーマット改訂
②GNSS(GPS)のL1C/B対応受信機への代替
③GNSSソフトウェアのL1C/B対応
というような処理が必要になる。ファームウェアのバージョンアップで対策できるようなシロモノなのか?
みちびきのサブ&センチメーター級測位は、“補強信号”を受信可能なチップが必要。市販はほとんど無く、対応とあるのは衛星捕捉数が増えただけ。
このことからも、L1C/B対応は簡単ではなさそうに思える。日本近隣の高精度測位の限定ニーズに、GPSメーカーが対応するか?も疑問。
となると…
1⃣既存GNSS(GPS)受信機で、L1C/A信号発信中はみちびきを活用、信号変更後は、GPS+GLONASS測位になるだけ。(GPSだけの測位精度も従来のレベルに低下かと)
2⃣みちびきLC1/B対応受信機に代替する。(日本製なら、そのうち出てくるはず?)
の2択かも?
初号機のL1C/Aは、代替機1RになるとL1C/Bとの切替式に。2~4号機は当面L1C/Aのみ発信する。
この時点で、現行4機のL1C/A対応は3機に減。(1Rは、早々L1C/Bに固定してしまうかも?)
5~7号機も1R同様切替式。(L1C/B専用化は早いかも?)サブ&センチメーター級測位信号の送受信体制が確立する。
これ、国内の測位にGPS衛星の依存がほぼ無くなるって話。L1C/Aの廃止に早く進みそうだな、と。
アジアとオセアニアの高度測位、日本国内では超高精度測位ができるようになったら、通常利用での“GPSさようなら”、あるかもしれない。
現行GNSS(GPS)受信機は、当面はみちびきのL1C/Aを捕捉できるはずだから、実用にすぐ困る事は無いようだけど。
そのうち、サブ&センチメーター級信号(QZSS)対応受信機が市販されるだろう。その時に、「高精度測位」を手にすればいい。
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【以下余談】
他国に依存しない自国単独の衛星運用システム確立、求められるものだと思う。
と同時に、衛星測位とは違う意味でも「お隣」に近づく感覚を抱くのは、自分だけ?